本のメンテナンスの話 「無水エタノール」

書籍が痛んだ場合の補修はプロでなければ見栄えの良い修繕は不可能。
これは熟練の技術スキルもありますが補修の為の紙類や糊等の部材が
まったく用意出来ない部分も大きな要因。

 修繕の為に似た紙質や色合いの紙を揃える事は困難であり、それらに対応
するには膨大な知識と資材が必要です。
まぁそのような修繕が必要な場合は高価な古書や思い入れの深い蔵書に
限られますがここではそこまで大がかりな補修には触れず、日常で安価な
方法が取れる場合のみのお話です。

実際の場合、書籍の汚れは日常的な 「手の脂」、「食べ屑」や「汗」
「飲料」の染み程度に限定されます。

●水で濡らしたタオルを硬く絞り拭く。
これは光沢のあるカバーや天小口地などを軽く拭いてあげて汚れを落とす場合には
有効ですが、和紙風の表紙やマット地の紙には擦った場合逆効果です。
絞りきれず水気が残った場合は逆に紙にシワが出来ますから後処理の注意が必要。

●無水エタノールで拭きとる。
無水エタノールとは消毒用エタノールですか?と聞かれますが
病院などで見かけるいわゆる消毒用エタノールと無水エタノールとの違いは
何なのでしょうか。

「無水エタノールは、水が含まれておらず、純度が99.5%のもの。」
「消毒用エタノールは、無水エタノール:水=8:2の割合で薄めたもの。」
「普通のエタノールは、純度が約95%のもの。」

つまり、それぞれ純度と水が含まれているかの違いです。

 無水エタノールは、消毒や殺菌としての能力は弱いが洗浄能力は高いため
用途は汚れや手垢、そしてシール類を剥がしたあとの糊の剥離などに効果を発揮します。

また、揮発性が高いので乾きやすいことが無水エタノール最大の特徴。
そのため、多少の汚れを拭いた後でも跡が残らず、その後の水拭きが必要ない
ところも利点です。

 私の場合、無水エタノールは量販店で購入します。その際「綿棒」や「綿手袋」も
一緒に購入してます。
ジュースや食べこぼしなど軽度な範囲ならば綿棒を使い汚れの部分を無水エタノールを浸し
綿手袋にて拭きとる、もしくは頁を表裏から挟み込んでシミ抜きする。など力加減が容易です。
ある程度読み終えた本を書棚にしまう場合でも、綿手袋を装着したまま
少量の無水エタノールを手の平側に付けカバーや天小口地の部分をまとめて「なでて」
拭きあげてあげれば揮発が早いので数冊まとめて作業ができ楽です。
コーヒーや紅茶、コーラなどでもシミ抜きと同じ要領で落とす事が出来ますので
500ml一本あると大変便利です。

ただ揮発性が高い事を過信し大量に濡らしてしまえば、水と同様に紙にダメージを
与えてしまいますので用法は「適量」が必須です。

●注意点
「火気厳禁」
無水エタノールは非常に引火しやすく危険です、火元や消したばかりの
コンロの周りなどで使用する事はおやめ下さい。
「肌の弱い方は用法に注意」
個人差はありますが直接手で触ると、肌荒れを起こす方もおります
そんな場合は必ずゴム手袋をはめてから扱いましょう。
*私は意外と肌荒れには強いのか直接触れ使ってもさほど肌荒れしませんが
 さすがに長時間作業しますと乾燥肌の様に白く荒れますから過信はいけませんね。
「換気」
無水エタノールは揮発しやすく、思った以上に臭いもきついです。
ツンとした刺激臭があります、必ず換気か風通しの良い場所で使ってください!